政治の世界において、「亥年」は特別な年となります。4年に一度の「統一地方選挙」と、3年ごとに半数改選となる「参議院通常選挙」が重なる「選挙イヤー」だからです。
さらにこの度は、平成の御代が替わる特別な亥年。そこに合わせるかのように、衆議院解散総選挙の噂がチラホラ出ていたり、(スケジュール的に相当厳しいですが)憲法改正に関する国民投票の可能性だって残されています。また大阪に限れば、いわゆる「大阪都構想」をめぐる2回目の住民投票が実施されるかもしれません。
ちなみに12年前の亥年は、統一地方選も参議選も自民党が歴史的惨敗を喫し、その後の民主党政権誕生の足掛かりとなりました。
さてそんな「政治の年・選挙の年」となるかもしれない本年の初めに、改めてその根幹である「選挙制度」について考えてみます。
突然ですがあなたは、「衆議院選挙における比例代表制度」と「参議院選挙における比例代表制度」について、その違いを正確に答える事ができますか?
これが出来る方は、相当政治にお詳しいと胸を張っていただいて結構だと思います。私の周囲にいるかなり政治への関心が高い方でも、完璧に理解している人は実は少ないです。つまりそれだけ、国民にとって分かりにくい制度になっているという事です。
ちなみに正解を簡単に書きますと、
衆議院選挙
・選挙区が全国11のブロックに分かれている。
・立候補届出政党に投票する。つまり投票用紙に政党名を書くという事。
・届出政党が比例名簿順位を決められる。
参議院選挙
・全国選挙区である。
・立候補者または立候補届出政党のどちらに投票しても構わない。
・届出政党が比例名簿順位を決められない。順位は立候補者の個人票数によって決定される。
という違いがあります。ややこしいですね。もし今年の7月に衆参同時選挙が実施される事になれば、比例の投票方法の違いだけでも多くの有権者が混乱してしまいそうです。
どうしてこのような、国民にとって分かりにくい制度になってしまっているのか?
一言でまとめるなら、「様々な政治的妥協の産物」だからです。
昨年末、平成という時代を振り返るNHKシリーズ「平成史スクープドキュメント」の第3回として『"劇薬"が日本を変えた 〜秘録 小選挙区制導入〜』という番組が放送されていました。ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。金権政治に対する国民の不信・不満が高まる中、当初は抜本的な政治改革の起爆剤として考えられた衆議院の選挙制度変更案が、自民党内の権力闘争や与野党のもたれ合いなどによって大きく変容していく様が生々しく描かれていました。
「選挙制度の変更は、議員にとって自らの当落に直結する事だけに、最も妥協の産物となりやすい」
とはよく言われますが、まさしくその典型を見るようでした。
さて、番組に登場していた小沢一郎 元自民党幹事長(現自由党代表)をはじめ、「政権交代が起こりやすいので政治に緊張感が生まれる」「(中選挙区制に比べて)カネがかからない」といった理由で、現在の衆議院小選挙区比例代表並立制を支持する政治家が多いですが、私は平成21年(2009年)の民主党への政権交代でこの制度の役割は終わり、その後はむしろ弊害の方が目立ってきたと捉えており、断固変えるべきだと考えています。(弊害に関しての私の考えは、こちらの過去ブログをご一読ください。)
では、どう変えるのか?
私は以前より、比例代表制を廃止し、全く新たな「2名連記制」という仕組みを加えて、1つの選挙区から3〜5人の議員を選出する政権交代可能な新しい中選挙区制を提案しています。
「2名連記制」とは、読んで字のごとく有権者が投票の際に2名の候補者の名前を併記できるシステムのことです。この制度下では、政権を狙うような大政党ならば、それぞれの選挙区で過半数以上の候補者を立て複数人の当選を狙います。有権者からすれば、政党で選ぶならば同じ党から2名選べば良いし、人物本位ならそれぞれ別の政党から選んでも良い。小政党でも1名を当選させることは可能なので、現在のように大きく中身の違う政党同士が無理に一緒になろうとする必要も無くなります。
「選挙で候補者2名の名前を併記する」というかなり斬新な方法ですし、もちろん中選挙区制自体にもメリットとデメリットがあります。しかし現行制度よりはよほど民意を正確に反映しつつ、政党と代議士個人のパワーバランスの偏りも改善されるはずです。私の予想では3〜4程度の政党による、連立を前提とした建設的でバランスのとれた政治が実現できるのではないかと考えています。
選挙区が広くなる分、確かにカネは今よりかかるでしょう。しかし、これからの厳しい時代に対応できる「より良い政治」のためのコストと考えれば、安いものではないでしょうか?
「小選挙区制になって、代議士が小粒になった」
現職時代にご指導いただいた石原慎太郎さんが仰っていたこの言葉が、私には忘れられません。
「自民党(またはその時に勢いのある政党)の公認を得られるかで当落が決まるため、党内で自らの政治信念を貫きにくい」
「(1対1の構図であれば)投票する有権者の過半数の支持を得なければならないため、嫌われない事を最優先する」
近年の代議士の傾向としてよく指摘されるこうした点は、自分自身も2回の衆院選を経験して痛いほど理解できます。
だからこそ選挙制度そのものを、人類史上例を見ない少子高齢化、世界の不安定化と緊張度を増す東アジア情勢、逼迫する財政問題などが我が国を襲う「国難」といえるこれからの時代に備えて、「大粒の代議士」を輩出できる制度に改めるべきだと強く考えます。
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