先日、地域住民の健康寿命延伸のためのユニークなプログラム「泉佐野音楽介護予防教室(愛称:泉佐野元気塾)」を視察するため、大阪府泉佐野市へ行ってきました。
本題に入る前に、まず驚いたのが市役所入口付近に『泉佐野モバイル』という携帯ショップが鎮座していたこと。
聞けば、「地域スマホで地方創生」を企業理念に、日本で初めて地方自治体と官民連携協定を結び事業を行なっている地元企業とのこと。(詳しくはコチラのWEBサイトをご覧ください)
普通の市役所では絶対に見られない光景ですから、色々と面白い取り組みにチャレンジされていることが、入口を通っただけで感じられました。
先に、『泉佐野元気塾』の簡単な説明を。
国が目指す地域包括ケアシステムの構築に向けて、現在各地域で様々な介護予防の取り組みが行われていますが、『泉佐野元気塾』が面白いのは、株式会社第一興商の生活総合機能改善機器「DKエルダーシステム」を導入している点です。
第一興商といえば通信カラオケ「DAM」が有名ですが、そのシステムをうまく利用しながら、楽しく介護予防に取り組めるよう開発されたのがこの「DKエルダーシステム」なのだそうです。
その効果、百聞は一見に如かずでした。
教室の途中から見学したのですが、入るなり軽快なサウンドと皆さんの楽しそうな笑い声が響いていたのです。
写真は、『マツケンサンバ』を踊っているところ。歌い踊ることで、全身運動・腹式呼吸により自然と代謝が促進されています。また、2つ以上のことを同時に行う「デュアルタスク」効果で脳トレにも良いとのことでした。
この他にも、昭和歌謡イントロクイズで記憶力を刺激したり、ゲームで競争意識を持たせることで達成感を生み出したりと、様々な「仕掛け」が組み込まれていることがよく分かりました。
教室見学後、市役所に戻って担当職員の方から説明を受けました。
平成28年6月から始まったこの『泉佐野元気塾』、非常に好評で現在市内45カ所(自治会館等40カ所+公共施設5カ所)で月1回90分の教室が展開され、1教室20〜30名程度の参加者が集まっているとのこと。
他の介護予防教室と比較した特長として、
①男性参加率が約30%と高い(他は大体10%程度)。参加募集の呼びかけで中心となった自治会長が、ほとんど男性であることが大きな理由だと考えられる。
②こうした教室に初めて参加したという「新規参加率」が約70%と高い。自治会館等、自宅から10分圏内の場所で開催することで、初めての参加を促した。
③継続参加率が70%を超え、定着度合いが高い。前述のように自宅から近く通いやすいことと、プログラムに対する満足度の高さが理由と考えられる。
上記のような点が挙げられます。
具体的な介護予防効果についても、月1回90分では厳しいだろうと思われるかもしれませんが、肩周りの可動域測定や片足立ちタイム測定等で明らかな改善が見られるというデータが出ています。
気になる予算額についてですが、「DKエルダーシステム」のリース料と音楽健康指導士(現在は第一興商から派遣)の人件費を合わせて年間2,000万円規模とのこと。ふるさと納税等を活用し予算を捻出しているそうです。参加者の多さや活況具合を考えれば、非常に効果的な投資だと考えて良いと思います。しかも教室時以外は、通常の通信カラオケとして多くの自治会館で有効活用されているため、「費用対効果が非常に高いです」と職員の方も胸を張っておられました。
『泉佐野元気塾』の成功要因は沢山あると思いますが、馴染みのあるカラオケ機器を用いての「楽しく取り組む仕掛け」が非常に工夫されていることが大きいと感じました。
現在は第一興商からの音楽健康指導士に頼っている教室運営を、地域から指導士を育成して自主運営に切り替えていくなど今後の課題はありますが、こうした「楽しい介護予防」がもっと広がっていってもらいたいと強く思います。
「高齢者の健康寿命をいかに延ばすか」
これは福祉という観点だけでなく、財政面やその他様々な影響を及ぼす国家的課題です。今後も色々な取り組みに注目してまいります。
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