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安保法制について 〜本来は憲法改正だが、賛成やむなし〜

いわゆる安全保障法制をめぐり、国会も世論も紛糾しています。

 

憲法改正を真正面から訴えて昨年12月の総選挙を戦い、惨敗した私は、あえてこのテーマについて今まで意見表明をしてきませんでした。

しかし多くの方から「坂元さんはどう考えているの?」とのお尋ねを頂戴する中で、今週中にも衆議院通過かと予想されるこのタイミングに私なりの見解をまとめておくことに致しました。

 

結論から書きます。私は「本来は憲法改正が必要だが、賛成やむなし」と考えています。

 

今回の安保関連法案をめぐっては、衆議院で100時間以上の審議時間を使い様々な点が指摘されてきましたが、国民の関心も含めて主には以下の3つのポイントに集約されるのではないかと思います。

 

①この安全保障関連法案は、憲法違反ではないのか?

②集団的自衛権の限定行使容認は、今の日本に必要なのか?

③世論調査などで過半数の国民が「説明不足」もしくは「反対」と答える中で、今国会での成立に向け進めて良いのか?

 

これから、私が「賛成やむなし」とする理由を、上記3点の中身に沿って述べていきます。



 ①この安全保障関連法案は、憲法違反ではないのか?

6月4日の衆議院憲法審査会で、自民党推薦参考人の長谷部恭男早大教授を含めた3人の憲法学者全員が「憲法違反」と指摘してから、俄然この点がクローズアップされるようになりました。

 

しかし、ちょっと待ってください。「憲法違反は許さない」と叫んでいる方も含め、冷静に以下の文章を見つめていただきたいと思います。

 

「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」

「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」

 

言わずと知れた「日本国憲法第9条 戦争の放棄」です。もう一度上の文章をじっくり読んでみてください。

この文言を真っ直ぐ読めば、自衛隊は憲法違反ではないですか?

 

そうなんです。前身の警察予備隊から数えればもう65年もの長きにわたり、既に我が国は、政府(内閣法制局)も学者も国民も「既成事実」として憲法違反を受け容れてきているのです。「自衛権は自明の権利として認められている」「自衛隊は『戦力』ではない」という苦しい苦しい言い訳を重ねながら。

 

さらにもう一点。憲法学上、第9条よりも重い最も大切な条文とされている第13条にはこうあります。

 

「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

 

では、拉致被害者の方々の「生命、自由及び幸福追求に対する権利」は「最大の尊重」をされてきたのでしょうか?

立法府に身を置きながら、かつての社会党や共産党は北朝鮮への配慮から拉致問題そのものを黙殺してきたのです。これこそ明らかな憲法違反ではないでしょうか?

 

今回の安全保障関連法案に関して、既に様々に破られてしまっている日本国憲法に対して「合憲か違憲か」という点だけに固執して議論するのはナンセンスだと私は思います。徹底的に合憲性にこだわるのであれば、歴史の針をかなり遡って憲法改正をしなければならなかったのです。(私が憲法改正を政治家としての一丁目一番地に据えるのも、まさにこの「戦後の欺瞞」を打ち破りたいからに他なりません。)

 

おそらく、ごく一部を除いて多くの国民が、いまさら「自衛隊は憲法違反だから即刻解体しろ」「自衛隊なんて必要ない」と望むことはあり得ないでしょう。であるならば、今回の安全保障法制は「冷戦の終結と中国の台頭によって、近年急速に緊張感を増してきた日本を取り巻く国際環境の変化に対応して、国民の生命・財産・権利、そして国土をいかに守るか」というリアルな安全保障の問題として考えるべきだと私は捉えています。

 

 

②集団的自衛権の限定行使容認は、今の日本に必要なのか?

続いて、違憲論を乗り越えリアルな安全保障の問題として捉えたとき、集団的自衛権の限定行使容認は今の日本にとって必要なのかという点が問題となります。

 

振り返れば、安倍内閣が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行ったのが約1年前の平成26年7月1日、通常国会閉会の直後でした。この時、「今なぜ急に?」と唐突感を感じられた方も多かったと思います。しかし、日本国内の危機感は驚くほど薄いですが、中東地域でISIL(イスラム国)が台頭する中で、平成26年3月のロシアによるウクライナ東部への軍事介入以降は特に、世界の安全保障情勢が劇的に変化し危険度を増していると考えられているのです。

 

そして、特にウクライナで起こっていることは日本にとって「対岸の火事」では全くありません。

 

ウクライナ東部のクリミア半島は元々ロシア系住民が多い地域でしたが、ウクライナの政治的混乱を受けて、ロシアは「ロシア系住民の保護」を名目として軍事介入を強行。事実上の占領地域としました。アメリカやEUはこれに強く反発したものの、ロシアとの関係悪化を懸念して制裁などの措置はとれず、状況は未だに膠着しています。

 

この事態にいち早くロシア支持を表明し、アメリカの弱腰をほくそ笑んで見ているのが中国なのです。中国にとってのクリミア半島とは台湾であり、「中国との統一を望む台湾住民の保護」を名目に台湾へ軍事介入しても、アメリカは動かないのではないかという見方を中国が深めたことは間違いありません。そして台湾を統一した後の彼らの目標が、尖閣であり沖縄であることは周知の事実です。日本を取り巻く世界情勢・国際環境が厳しさを増しているのは疑いようのない現実なのです。

 

「世界の覇権を争ったソ連と違い、中国が東アジア地域の覇権国家に止まるつもりならば、アメリカが全面対立する必要はないのではないか」という意見が米国世論に根強い中で、集団的自衛権の限定行使容認によって日米同盟の強化を図る意味は大きいと私は考えます。

 

 

③世論調査などで過半数が「説明不足」もしくは「反対」と答える中で、今国会での成立に向け進めて良いのか?

確かにマスコミの世論調査では、今国会での成立を目指す考えについて否定的な回答が目立っています。しかし、世論調査のサンプル数は多くて数千〜数万単位。国民の総意を集めているわけではありません。そして、公式かつ最大の世論調査ともいえる国政選挙(昨年12月の衆議院総選挙)で、国民は「集団的自衛権の行使容認を行う」とした安倍内閣・自公連立政権に2/3を超える圧倒的な議席数を与えたのではないですか?

 

この点については、過激ですが長谷川豊氏のブログで解りやすく書かれてあります。

 

続いて、「安全保障法制の必要性は認めるが、国会論戦を通じての国民への説明がまだまだ不足しているので、次期国会へ持ち越した方が良い」という意見をお持ちの方も多いかと思います。しかし、衆議院だけで100時間を超える審議を行えば、さすがに論点は出尽くしてきました。集約すれば私が本ブログに書いた上記2点と、自衛隊出動の範囲をどこまで限定するかという点(政府案と維新の党案の違いはここ)に尽きます。そして残念なことではありますが、これ以上の国会論戦で建設的な議論が行われる気配もありません。参議院での審議が残っていますから、国民への分かりやすい説明はそちらに期待するタイミングかと感じます。

 

何よりもこの点を強調したいのですが、この安全保障法制の国会審議が長引けば長引くほど、他の重要な国政課題がストップしてしまいます。アベノミクスを継続・修正しながらいかに財政再建を進めていくのか、地方創生をどうやって実現していくのか、いよいよ深刻化する人口減少・高齢化にどう手を打っていくのか。。。そういった本当は待ったなしで取り組まなければならない問題が、どんどん先送りにされていくのです。社会保障制度の改革なんて、今の国会ではどこに行ってしまったのという状態になっています。

 

恐慌による経済状況の悪化と地方・農村の疲弊が国民の不満を呼び、軍部の増長を招いた昭和の歴史に学べば、集団的自衛権の行使容認よりも遥かに危険なことは何かが理解できるのではないでしょうか?

日本の置かれている状況は、これ以上の問題先送りが許されるほど甘くはないと私は考えています。

 

 

ここまで、安全保障法制に対する3つの論点について、私の見解を述べました。

最後に結論をひっくり返すようで恐縮ですが、私は今回の安倍内閣のやり方に諸手を挙げて賛成している訳ではありません。むしろ本質的には反対であり、堂々と憲法改正を行ってから取り組むべきだと考えています。なぜなら捉え方によっては「時の政権の解釈によって、運用上の憲法内容を大幅に変えることができる」という非常に危険な前例をつくったとも言え、鳩山・菅政権のような反日左翼的な政権がもし再び誕生してしまった場合、今回と全く逆方向の恐ろしい解釈変更を行う可能性を考えておかねばならなくなったからです。

 

しかし、現実的には安倍総理の判断と手法を「やむなし」だと評価します。今の連立政権の構造上、公明党との決裂を覚悟しての憲法9条改正はかなり厳しく、時間もかかります。そうなると取りうる手段としてこれしか無かったというのが総理の本音でしょうし、厳しさを増す東アジア情勢の中で国民と国家を守るための苦渋の決断だったのだと私は受け止めています。独立回復後すぐに憲法改正に踏み込まなかった吉田茂元総理や、沖縄返還のためにアメリカと核密約を結んだ佐藤栄作元総理のように。

 

ただ、理解はしますが踏襲したいとは思いません。政治家さかもと大輔個人としてはあくまで「憲法改正」を堂々と掲げ、これからも活動してまいります!

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コメント: 1
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    Nakita Ritz (金曜日, 03 2月 2017 02:58)


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